– About –
筑波山の麓、山間の田舎町で生まれた私。実は書との出会いは、きっと多くの方がそうであったように私も “習い事として” でした。特別な思いがあって始めたわけではありません。
ただ、ほかの習い事と違って、書は学生時代ずっと続いて、気づけば大学も大学院でも書を専攻したのでした。こういうのをきっと「ご縁」というのですね。
しばらくは日本で教えていましたが、ある時「フランスで教えませんか」とお誘いをいただいて。フランス語を話せないけれど ”やってみよう” と思い飛び込んだのです。そこで初めて自分で、意識的に書に向かいあうようになりました。
スイスとの国境、アルザス地方のコルマールに10年住んで、今はそこから少し南のミュールーズという町の近郊に住んでいます。
フランスの方に教え始めてもう17年になります。フランスの方は「この字はこう書くべき」がないので、驚くほど自由に、心のままに表現されます。日本人として私にいつの間にか形成されてきた破れない殻、超えられない枠を、彼らは美しく華麗に「枠超え」をして見せてくれました。
外から見るからこそ際立つ、日本の侘び寂びの文化。いきなり赤で字を書くわけではなく、あくまで黒と白がベースで、文字があり、メッセージがある。線の美しさにもこだわる。そこに、書を引き立てるための色と空間を融合させることで、より洗練される。それが彼らと接する中で私がたどり着いた「枠超え」です。
一方でアーティストとして様々な挑戦もしてきました。日本にまつわる企業や行政のイベントに呼ばれて書のパフォーマンスをしたり、華道の大御所坂川喜久瞳先生の本に書を提供させていただいたり。
中でも私自身に一番インパクトを与えたのは、2018年、バリゾル社とのコラボレーションです。日本では「書」は小学生で習い、お正月の書き初めや居間の掛け軸として見慣れ、強いメッセージ性があって日常生活に密着したものですが、西洋では、書はインテリアの一部として捉えられます。書というよりもグラフィックとして、伝統とモダン、和と洋が融合したアートです。バリゾル社とのコラボレーションで、私の書をインテリアとして西洋に浸透させることができました。
2023年、冬。今後の方向性に迷い自己探求を深める中で、私は自分自身が枠を超えることを書で体現し、また、同じように枠を超える体験をより多くの方々にもしてほしいのだと気づきました。そこで今後は2つの方向で、より私の書を追求していきたいと思っています。
一つは、「枠を超える美しさ」を体現する書家として、ピアニスト、フォトグラファーなど
様々なアーティストとコラボレーションして新たな「2極の融合」の境地を作りたい。
もう一つは、「枠を超える」をみなさまに体験していただくために、ルールのない”自由”を突きつけられ固定観念を手放すグループレッスン、そして外国人に書を教える中で多くの驚きや気づきを得る講師養成講座。
これらを積極的にご提供すべく、邁進してまいります。ご期待ください。
学歴
大東文化大学文学部日本文学科 卒業
筑波大学大学院 芸術学研究科書専攻(現、人間総合科学研究科書領域)博士前期課程 修了
故古谷蒼韻氏(日本芸術院会員、文化功労者)の門下にて腕を磨く